本展示は、ロサンゼルスを拠点に活動するWAKA WAKAをカリモク家具の工場へ招いたことから始まりました。彼らはカリモク家具が長年培ってきた卓越した技術や職人技とも言える技能に触れ、その視察の中で、和家具や日本の家庭用家具に古くから用いられてきたシルエットや意匠に新たな価値を見出しました。そしてこれらを基盤に、現代の視点で新しいデザインを生み出すことを目指しました。
特にWAKA WAKAが魅了されたのは、カリモク家具の高度な塗装技術と張り込みの技術です。本展示では、これらの技術を駆使して製作された19点のアイテムと、それによって生み出される新しいホームワールドをご覧いただけます。日本の住まいにおける伝統的な家具は、戦後のアメリカの影響を受けながらも独自の進化を遂げてきました。それは、WAKA WAKAにとって原体験とも言える風景であり、深く印象に残るものでした。この古くからの日本の生活様式から生まれた家具たちに、現代の欧米の視点という新たな機能と意味を加え、新しい家具や様式を生み出すこと、それこそが伝統を守るだけでなく、未来に向けて継承していく1つの手段となるのです。
日常の家具を再解釈し、新たなムード(感性や様式)を創り出す試みとして、このプロジェクトで“Atmospherizm(アトモスフィアリズム)” という新たなスタイルを提唱します。この言葉は、文字通り“Atmosphere” のから派生した造語であり、“Atmospherizm” が持つ空間のエネルギーやトーン、ムードといった要素に着目し、それらを再定義して新たな空気感を創造しようとする概念です。
アトモスフィアリズムがもたらす新しい空間では、これまでの日常があたかも新しい体験のように感じられ、そしてその体験から、既存のものを超越するエネルギーや活力が生み出されます。アトモスフィアリズムは単なる家具の再解釈に留まらず、空間全体にわたる新しい生き方や過ごし方の提案です。部屋を飾るインテリア、境界線としての仕切り、空間そのもの、窓や光、時間や反射といった要素を通じて、新たなトーンと体験を創り出します。
また、会場となるKARIMOKU RESEARCH CENTER の1F「THE ARCHIVE」には、2023年のLA Design Festivalで発表された、WAKA WAKAによる茶室を展示します。この茶室は、千利休作と言われている国宝・妙喜庵「待庵」をインスピレーションにデザインされ、そのサイズも「待庵」とほぼ同スケールで製作されました。
本展示では、カリモク家具の技術を使用し、2023年の展示作品とは異なるアプローチで、細部へもこだわった新たな作品としてお披露目します。茶室は、亭主と客人とが直に心を通わせるための特別な空間です。外界から切り離された別世界で時間を共有するこの空間での体験と、WAKA WAKAとカリモク家具がこの展示のために作り上げた新しいホームワールドを重ねながら展示そのものを楽しんでいただけます。
MAIN EXHIBITION:
KARI KARI MOKU MOKU WAKA WAKA
DESIGNER:
WAKA WAKA
VENUE:
THE ARCHIVE
EXHIBITION DATES:
2025. 01. 11 - 2025. 03. 28
Closed : 土日
※1/11(土)、1/12(日)のみ特別営業