2-chōme-24-2 Nishiazabu, Minato-Ku, Tokyo 106 - 0031

KARIMOKU RESEARCH CENTER

〒106-0031 東京都港区西麻布 2丁目 24-2

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[前編]Survey 01 : NEW TRADITION|Lichenによる“Survey(=調査)”の軌跡
[前編]Survey 01 : NEW TRADITION|Lichenによる“Survey(=調査)”の軌跡
KARIMOKU RESEARCH CENTER
Survey
2025年8月13日より、日本で発売を開始したブランド『CMPT by Lichen』の家具『Glass CMPT Table』

カリモク家具が2024年10月に始動した新プロジェクト「KARIMOKU RESEARCH(カリモクリサーチ)」。プロジェクトの核となる『Survey』では、年間4つのテーマを設け、1つのテーマ毎に国内外のクリエイターやデザイナー、アーティスト、企業等と連携して“Survey(=調査)”を行い、そこから得られた洞察をもとに、家具に留まらない新しいソリューションの展示・開発を行っています。

第2回目となる『Survey』のテーマは『NEW TRADITION』。今回のSurveyには、デザインスタジオ「WAKA WAKA」に加えて、デザインインキュベーター兼デザインスタジオの「Lichen(ライケン)」がリサーチャーとして参加。Lichenは、Jared Blake(ジャレッド・ブレイク)とEd Be(エド・ビー)によって2017年にニューヨークで設立され、デザイナー、職人、問題解決者、大工など、さまざまな分野のメンバーが集まり、家具や空間デザイン、これらの要素との過去と現在の関わり方を探求することを中心にグローバルに活動しています。

2025年1月11日から4月18日までKARIMOKU RESEARCH CENTER・B1Fで開催した「Karimoku Re:issue by Lichen」で展示した、Lichenが携わったソファが製品化に至るまでのSurveyの取り組みについてJaredとEdにインタビュー。

前編となる本記事では、Lichenとカリモク家具の出会いから、工場見学や現場体験を通じて何を学び、どのように「ハイテク・ハイタッチ」の思想や職人技に触れていったのかを追います。また、分業・自動化・手仕事が生み出す現場の価値、そしてカリモク家具で得た「忍耐力」という教訓が、Lichenのクリエイションやチームの在り方にどう影響を与えているのかも紹介します。

< Interview & text by Ryo Hasegawa, Translation by James Koetting>

Lichenがカリモク家具の“ハイテク・ハイタッチ”から学び得たもの

Lichenがカリモク家具に最初に出会ったのは数年前、チームで日本を初めて訪れた際、「Karimoku Commons Tokyo」に足を運んだのがきっかけだと言います。家具チームと自然な形でつながったというものの、すぐに具体的なコラボレーション企画が立ち上がったわけではないと言います。

それでもショールームに展示されているものを見たJaredとEdは、Lichenとカリモク家具の間に共通点や補完的な差異を見出し、将来的なコラボレーションの可能性への期待を感じたそうです。

「私たちは以前からずっと日本の職人技やそのシンプルさに魅了されてきました。そして、私たちのデザインや考え方の多くが、日本の職人技や家具デザインに表れていると感じています。多くの共通点を見つけましたが、同時に違いもありました。私たちが提供できる補完的な要素や、逆に私たちがまだ十分に習得していない技術も見えたんです」(Jared, Lichen)
「それに、カリモク家具はグローバルなデザイナーと協業するセンスがとても優れていて、私たちも将来的にはそこを目指したいと思っているんです。自分たちの『ホーム』を越えていくことは、私たちにとって重要なことであり、異なる文化がどのように融合するかという点も、私たちにとってとても大切なんです」(Ed, Lichen)


2024年10月、新プロジェクト「KARIMOKU RESEARCH」が始動したことで、カリモク家具とLichenのコラボレーションが実現。2025年1月にJaredとEdは再び来日し、愛知県にあるカリモク家具のオフィスと工場を訪れました。

当時、Lichenはこれまででもっとも大きな投資となるCNC旋盤を導入したばかりだった頃で、そのことを踏まえても、カリモク家具が有する設備のスケールの大きさに圧倒されたと言います。

また、見学時に加藤洋(カリモク家具株式会社 取締役副社長)とも話す機会があり、加藤から「ハイテク・ハイタッチ」というコンセプトについて聞いたそうです。これは機械ができることは、人間の仕事を置き換えるのではなく、職人たちが“ハイタッチ”=繊細で人間的な作業により集中できるように補助するという考え方です。

「これはまさに私たちのブランドが取り組んでいるテーマでもあり、テクノロジーをどう活用すれば“ハイタッチ”に貢献できるかを模索しています。現在、私たちの家具の多くには、製造工程の一部にCNC加工が取り入れられています。まだ発展途上ではありますが、カリモク家具は数多くの機械と設備を備えていて、生産プロセスをさらに進化させています。これは私たちにとって本当に刺激的な体験でした」(Jared, Lichen)

「ハイテク・ハイタッチ」というカリモク家具が大切にしているコンセプトに加え、Edはカリモク家具のサステナビリティへの取り組みにも感銘を受けたと付け加えます。


「​​たくさんの機械を持っているのは素晴らしいことですが、それだけでなく、それらの機械を使って廃棄物を減らしたり、家具づくりにおけるカーボンフットプリントを削減したりできる点が、とても重要だと思います。私たちも引き続き、カリモク家具との協業を通じてそのプロセスから学んでいます。どうすれば廃棄を減らし、できる限り素材を再利用できるかを模索し続けているところです」(Ed, Lichen)
JaredとEdがカリモク家具の工場に訪れた時の様子

分業・自動化・手仕事——Lichenによるカリモク家具の現場体験

カリモク家具の施設を見学した中で、Jaredが特に感銘を受けたというのが「チーム集中力と専門性の高さ」だと言います。

「私たちはまだ小規模なチームなので、メンバーそれぞれが多くのことをこなさなければなりません。でも、それぞれが一番得意とする分野に集中できたほうが、やはり効率も成果も良くなるんです。これは“ハイテク・ハイタッチ”の考え方にもつながっていて、自分が得意でない作業をテクノロジーや他の仕組みがサポートしてくれることで、自分の強みを最大限に発揮できるようになるんですよね」(Jared, Lichen)


Jaredがカリモク家具を訪問してすぐに気づいたのは、梱包チームの存在。段ボールを製造して箱詰めする工程のためだけに一つの工場があることに驚いたと言います。各工程に専属の担当者がいることで、全体の効率とクオリティが上がることを学んだそうです。

また、リサーチの過程でもっとも印象的だったとEdが語るのは、カリモク家具がこれまでに築き上げてきた幅広い展開だと言います。

「​​昔ながらの日本の伝統的な家具から、現在の『KNS(Karimoku New Standard)』のような現代的なスタイルまで、すべてを網羅している点は本当に素晴らしいと思いました。そのカバー範囲の広さには驚かされましたし、それはやはり、国際的なデザイナーたちと協業してきた成果でもあると感じました」(Ed, Lichen)


Edが言及した「KNS」とは、先進的なアイデアと優れた製造技術を融合した2009年設立のブランドです。 カリモク家具の職人が培ってきたユニークな視点と、国内外から選ばれた有数のデザイナーたちが手を組み、日本の家具デザインの新たなスタンダードとなるべく取り組んでいます。

特に印象的だった製品としてJaredが挙げるのが、『Karimoku Case』のペーパーコードを使用したダイニングチェア。「機械では生み出すことができない」と感じた唯一のプロダクトだったと言います。

「もちろん、レザーや木材の欠陥を自動で検出してカットできるような、信じられない機械もあって、そういった技術も本当にすごかったんですが、逆に椅子に編み込みを施すような作業――たとえばペーパーコード編のようなシンプルだけど繊細な工程は、まさに人間にしかできないんですよね。実際、そのペーパーコードチェアは一人の職人さんがすべて手作業で仕上げていたんです。それには本当に感動しましたし、あの体験は私たちの訪問の中でも特に大きな学びの一つでした」(Jared, Lichen)


テクノロジーが進化し続ける中、「どこに人の手が必要になるのか」という問いはその重要度をますます増していきます。最終的に人が手放さずに持ち続けるものは何かーーその視点で見たとき、あの椅子は象徴的な存在であったとJaredは指摘します。

カリモク家具の施設の見学を経て、実際にカリモク家具とLichenの間でワークショップのような取り組みが行われることになりました。この取り組みから共同制作されたのが「Recon AA」という作品。これは石巻工房の代表作である「AAスツール」を再文脈化するというもので、愛知にあるカリモクの工場で、同社のデザイナー、技術者、エンジニア、大工と二人三脚で形にしました。

その後も数回、Lichenはカリモク家具の施設に足を運び、同社の文化や技術への理解を深めていったと言います。

「『KNS』への理解を深める中で気づいたのは、アメリカで私たちが慣れているものとは全然違うということ。たとえばKGIS(Karimoku Group Industrial Standard)のようなシステムだったり、特有のプロポーションや基準など。とはいえ私たちとの共同制作では、日本の消費者に向けた『日本風』な家具を作ることは避けたかったんです。だからこそ、真にカリモク家具、ひいては日本を理解するためには、その文化的な視点や現地の空気に実際に浸る必要があると感じています。最後の訪問では、愛知や岐阜にも行くことができました。そこで食べた蕎麦も、『あ、いつも食べてるのと違うな』と思いましたね(笑)」(Jared, Lichen)

カリモク家具でのリサーチを通じて得た「忍耐」という教訓

カリモク家具とのリサーチを通じて得た知見や技術が、Lichen全体のビジネスにどんなインパクトをもたらすのかはまだわからないとJaredは留保します。

それでも、Jaredはカリモクで学んだスキルを自分自身の中に取り込み、まずは自分の個人的な仕事に取り入れたと言います。ペーパーコードチェアを見せてくれたカリモク家具の職人の方の助けを借りて、自宅にある椅子を自分で修理。それはとても特別な経験だったと言います。

カリモク家具との関係を通じて得たもっとも大きな教訓としてJaredが回顧するのが「忍耐」です。

「たとえ僕たちのスピード感が速かったとしても、どうしても飛ばせない工程ってあるんですよ。すべての素材、金具の一つひとつ、木材の種類、寸法などを一つひとつ丁寧に選んでいます。だから、もしこのカリモク家具とのコラボレーションの経験を一言でまとめるなら――「忍耐力」ですね」(Jared, Lichen)

Lichenはニューヨークで店舗運営をしながら、ヴィンテージ家具の販売と新しい家具の制作の両方を行っています。そのため、常に古い家具と新しい家具をどう組み合わせ、再文脈化(re-contextualization)するのかを模索していると言います。その観点からも、カリモク家具とのリサーチは示唆に富んでいたとEdは振り返ります。

「カリモク家具のショールームを訪れたとき、過去にカリモクが手がけてきたさまざまなラインが展示されていて、まるで『カリモク・ミュージアム』のようだと思いました。私たちがよくやるのは、過去のアイテムの中で、現代のライフスタイルやトレンドにフィットするものを探すことです。家具はどこかファッションに似ているところがあって、あるスタイルが廃れても、また再び流行として戻ってくることがあるんですよね。だから、そういった流れを常に意識して目を光らせています」(Ed, Lichen)

後編記事では、なぜLichenがカリモク家具の数あるヴィンテージ家具の中から『ZEソファ』を選び、再び現代に蘇らせたのか、その背景にある「タイムレス」という価値観やデザイン哲学に迫ります。あわせて、コンパクトで柔軟な住空間に寄り添う新しい家具「CMPT by Lichen」コレクションがどのような経緯で生まれたのか、モジュール性や収納へのこだわり、都市生活者のリアルなニーズに応えた開発ストーリーを掘り下げます。

さらに、Survey 01のテーマである“NEW TRADITION”というキーワードを軸に、今後のプロジェクトの展望についても聞きました。