2-chōme-24-2 Nishiazabu, Minato-Ku, Tokyo 106 - 0031

KARIMOKU RESEARCH CENTER

〒106-0031 東京都港区西麻布 2丁目 24-2

2-chōme-24-2 Nishiazabu, Minato-Ku, Tokyo 106 - 0031

KARIMOKU RESEARCH CENTER

〒106-0031 東京都港区西麻布 2丁目 24-2

2-chōme-24-2 Nishiazabu, Minato-Ku, Tokyo 106 - 0031

KARIMOKU RESEARCH CENTER

2-chōme-24-2 Nishiazabu, Minato-Ku, Tokyo 106 - 0031

KARIMOKU RESEARCH CENTER

〒106-0031 東京都港区西麻布 2丁目 24-2

2-chōme-24-2 Nishiazabu, Minato-Ku, Tokyo 106 - 0031

KARIMOKU RESEARCH CENTER

〒106-0031 東京都港区西麻布 2丁目 24-2

2-chōme-24-2 Nishiazabu, Minato-Ku, Tokyo 106 - 0031

KARIMOKU RESEARCH CENTER

Survey 02 : TIMELESS CHANGE|Postalcoによる“Survey(=調査)”の軌跡[後編]
Survey 02 : TIMELESS CHANGE|Postalcoによる“Survey(=調査)”の軌跡[後編]
KARIMOKU RESEARCH

カリモク家具が2024年10月に始動した新プロジェクト「KARIMOKU RESEARCH(カリモクリサーチ)」。プロジェクトの核となる『Survey』では、年間4つのテーマを設け、1つのテーマ毎に国内外のクリエイターやデザイナー、アーティスト、企業等と連携して“Survey(=調査)”を行い、そこから得られた洞察をもとに、家具に留まらない新しいソリューションの展示・開発を行っています。

第3回目となる『Survey』のテーマは『TIMELESS CHANGE』。「時間とともに生き、残るものとは」を考える今回のSurveyには、ニューヨーク・ブルックリン発で、現在は東京を拠点に活動するデザインスタジオ「Postalco Design Studio(ポスタルコ)」がリサーチャーとして参加しました。ポスタルコは、日々の暮らしに着目した製品を、衣服から家具、スペースデザインに至るまで、独自の考えを応用して作り続けています。

使い捨てが常態化する現代において、ポスタルコが追求するのは、「永く使われること」を前提としたデザインです。その確かな土台となっているのが、日本の職人との対話から生まれる徹底した日本製のこだわりです。彼らの哲学とカリモク家具の技術が融合して生まれた収納家具『STAKKO(スタッコ)』が誕生するまでの取り組みについて、マイク氏とユリ氏にインタビューを実施しました。

後編となる本記事では、収納家具『STAKKO』の開発経緯、素材と技術への徹底したこだわり、そして「TIMELESS CHANGE」の具体的な表現に焦点を当てます。また、STAKKOを通してポスタルコが提案したい新しいライフスタイルについてもお届けします。

< interview&Text by Ryoh Hasegawa, Translation by James Koetting >

なぜ「収納」なのか? ポスタルコが着目した現代の課題

今回、ポスタルコは椅子ではなく収納家具という領域に踏み込みました。その背景には、デザイナーとしての「増やす」役割への倫理的な自問がありました。

「本当に、世の中にこれ以上モノをどんどん増やしていっていいのか、ということが時々不安になります。それよりも、長く使えるものを通じて、ユーザーの方に様々な良い経験をしてもらいたいという考えでデザインをしています」(マイク, Postalco)

マイク氏の目には、現代の多くの人が「買った時に良いと思ったが使わない」「高価だったから取っておく」といった中途半端なものを抱え、結果として開きたくない引き出しや戸棚が増えていく現状が映っていました。これらの「中途半端なもの」を整理するために、収納場所をもう一度見直すことが必要だと考えたのです。 その目的は、単に物を仕舞うことではなく、「自分に本当に大事なもの」を厳選し、それが生活の中で目立つようにすること。つまり、私たちが持っているものとの関係性を再構築するきっかけを与えることでした。

その結果生まれたSTAKKOの収納は、あえて引き出しを設けず表側がオープンになっています。
‍ 

「完璧すぎずに、居心地の良さを優先させました。中身が少しぐらい見えても、『ちょっとぐしゃっとなっていてもOK』という、使う人が工夫して選べるようなデザインです。オープンにして見せることで、自分が持っているものに対する意識が変わることも促せますし、ポスタルコらしい遊び心と温かみをこのコンセプトの根底に置いています。ロゴが手書き風であったり、なんでも自由に入れられる家具ということが伝えられたらと思い、展示は、アウトオブミュージアムの小林さんの自由な発想から造られたオブジェと相性が合いそうだと思いました。」(ユリ, Postalco)

Photo : Masaaki Inoue, Bouillon

『STAKKO』に込められた「TIMELESS CHANGE」の思想と ポスタルコらしい表現

『STAKKO』は、約1年という比較的早い開発期間を経て誕生しました。
マイク氏は、「TIMELESS CHANGE」というテーマを、人生の大きなライフチェンジに対応できる家具であることと深く結びつけています。

「家具を手放すタイミングは、引っ越しをするとき、一緒に住む人が変わるとき、子どもが生まれるときなど、大きなライフチェンジがあるときがほとんどです。そのタイミングで、多くの家具が変えられてしまうことが多い」(マイク, Postalco)


家具がもし、引っ越しや家族構成の変化といったライフチェンジを越えてもユーザーと共にあり続けられるなら、それは単なる道具ではなく、「人生の様々なステージを一緒に歩んでいく」という思い出を共有する大切な存在になります。それは、お気に入りのジャケットを長年着続けることで、その服に思い出が宿る感覚に近いとマイク氏は言います。

この哲学を体現するため、STAKKOは形を調整できる(モジュール性を持つ)家具として構想されました。ネーミングの『STAKKO』は、ものがスタッキング(重ねていく)できることから、ユリ氏が思いついた名前で、ロゴも木の塊(チャンク)をイメージした遊び心のあるデザインが採用されています。

収納家具『STAKKO(スタッコ)』組み合わせ次第で、デスクや棚など調整可能

カリモク家具の「乾燥技術」とダブテイル:STAKKOを支える技術の集積

STAKKOの核となるのは、素材・技術・ディテールの三位一体です。

素材には、カリモク家具が独自の調達ルートで仕入れた国産の無垢のクリ材を採用。無垢材は傷が入ってもいい味になり、長く使って楽しめることが最大の魅力です。「長く使う前提がない」パーティクルボードに木目調のシートを貼った家具とは異なり、STAKKOは時間と共に美しく経年変化する前提でデザインされています。

接合には、ダブテイル(蟻組み)ジョイントを使用。これは「鳩の尾」の形に似た「蟻ほぞ」を組み合わせる伝統的な箱物製作の技法で、外れにくく、釘やビスを使わずに強度が出るのが特長です。木の切り口が美しいディテールとして現れるこの仕上げは、無垢の木でないとできないものです。この技法によって、木の木目の変動を美しく際立たせ、一本一本の継ぎ目さえも楽しめるデザインとなっています。また、カリモク家具の長年の経験による「どこまで乾かせば後で反りや割れといったトラブルが起きないか」といった奥深い乾燥技術があってこそ、正確なパーツの組み上げが可能なのです。

仕上げについては、木の自然な雰囲気を残しながら耐久性を高めるため、ポリウレタン塗料の薄い塗膜を何層にも重ねるカリモク家具の特徴的な塗装技術を採用しました。マイク氏がオイル仕上げを好む中でも、この徹底した乾燥と精緻な加工技術、そしてポリウレタン塗料を薄く重ねる仕上げによって、木の自然な雰囲気を損なうことなく、丈夫で毎日の手入れが非常に楽であるという、実用性と美しさの絶妙なバランスを実現しています。

STAKKOで使用した 「ダブテイル(蟻組み)ジョイント」の技術

「完璧すぎない」温かさ:異素材のディテールがもたらす情緒的な効果

さらに、STAKKOには「温かみ」と「遊び心」を添えるディテールが加えられています。

引き出しのないオープンな棚の「ちょっとだけカバーしたい」という日常のニーズに応えるため、二つのオプションが生まれました。一つは、京都の職人によって藺草(いぐさ)で作られた縄のれんです。完全に隠さず、この「半分だけカバーされる」状態について、マイク氏は「まるで焼き鳥屋さんをちょっと覗けるような気持ち」と巧みに例えて表現しています。畳と同じ素材である藺草は、色変化も楽しめ、日本の伝統的なものづくりとカリモク家具の技術との相乗効果を生んでいます。

もう一つは、アルゼンチンで作られた手織り・手染めのラグです。カリモク家具の「ピシッと正確に作っている」ストレートな木の構造に対し、少しイレギュラーな手仕事の柔らかな風合いを持つラグや縄のれんの遊び心を組み合わせることで、意図的に「固まってるエッジがちょっと取れた感じに、もっと一緒に暮らしやすくなったらいいな」という情緒的な効果を生み出しています。この異質な素材の組み合わせこそが、ポスタルコらしい温かい表現になっています。

また、足の部分に使われているのが、木の塊を削って作った「CHUNK(チャンク)」と呼ばれるパーツです。もともと森で残されがちな木の塊をあえて贅沢に使うことで、とんがっているけど触りたくなるような、親しみのある印象を与えています。この存在感のある塊を用いることで、モジュール家具の持つ冷たい印象を打ち消し、ポスタルコらしい重くないバランスを取っています。

マイク氏が構想段階で描いた「STAKKO」のスケッチ

STAKKOが提案するライフスタイルと未来のものづくり

STAKKOは、金属で冷たい印象になりがちなシステム家具を、木の温かみを持たせながらもモジュール調整を可能にしました。

このフレキシブルな構造にはまた、エイジレス、ジェンダーレスな特色があり、使用場所を選びません。家での使用はもちろん、ホームオフィス、リテールスペース、ホテル、そして病院など、幅広い空間で使われることを想定しています。

ポスタルコが提案するのは、STAKKOを通じて実現する「木に囲まれた癒される空間」です。特に、冷たい印象を与えがちな蛍光灯の空間ではなく、自然な「光」が入り込む場所での利用を強く提案しています。

ポスタルコは、単に美しい製品を生み出すだけでなく、デザインを通じて現代社会が抱える根源的な問題に貢献したいという強いビジョンを持っています。それは、プラスチックの代替素材開発や食料問題といった大きなテーマへの関与であり、また、日本のものづくり文化を次の世代へと丁寧に伝えるエデュケーション的な役割も担っていきたいという願いです。

ユリ氏が語るのは、ポスタルコのものづくりの根幹に据えられている哲学です。


「世間では『人間中心(ヒューマン・セントリック)』と言われますが、私たちはむしろ『身体中心(ボディ・セントリック)』、つまり身体感覚を起点としてプロダクトを考える姿勢を、今後も変わらず続けていきたいと考えています」(ユリ, Postalco)

「その延長線上に、義肢・義足といった、身体と向き合うプロダクトへの関心もあります。チタン素材の開発など新しいテクノロジーが進化する中で、機能は向上しても、どうしても冷たい感じになりがちな義肢に、温かみのあるものづくりの考え方を取り入れることが、社会的に非常に必要ではないかと考えています」(マイク, Postalco)

今回の『STAKKO』の製作は、ポスタルコとカリモク家具の協業における一つの大きな成果であり、両者が追求する「TIMELESS CHANGE」の思想が、これからも進化し続けることを期待させます。